これも28日の毎日新聞。
「治療や介護の現場をアートで彩ることで患者や家族の心を癒し、回復を促そうとする「ホスピタルアート」に取り組む、徳島県在住のフォトグラファーがいる」で始まる記事は、ギャラリー島田で素敵な写真のコラージュ作品を拝見した、森合音さん(もり あいね)さんの事が書かれていました。
国立病院機構香川小児病院で、先月末、精神科病棟の廊下壁面に入院患者や医療者らと共に壁画を完成させられたそうで、「アートの力で立ち直った経験を持つ森さんは『どうしたらアートが人の気持ちに寄り添うことができるか』を探っている」と。
小さなお嬢さんの写真がところどころに配されたコラージュ、けして甘くはない切なさの漂う作品に惹かれ、見入っていた時、ご本人は不在だったのですが、ギャラリースタッフ鶯さんから、「森さんも大変な体験されていて…その経験から作品が生まれたそうです」と聞きました。
それが、03年にご主人が心筋梗塞で急逝(今37歳の合音さん、まだ30歳に成り立ての若いご夫婦だったはず)、崩れそうな精神状態を救ったのが、写真だったと…大学の写真科卒だけどカメラから遠ざかっていたのが、ご主人の遺品のカメラで娘さんや風景を写すようになり、やっと気持ちが前向きに、その写真がコンクールで受賞、命の大切さを感じたなどの反響もあり、「自分のようにアートが誰かの力になれるかもしれない」と感じたとのことを、この記事から知りました。
私も、22年前母のガンがわかり亡くなるまでの8ヶ月、お腹に赤ちゃんを抱えながら毎日のように通った病院の、廊下の冷たい情景に涙をこらえる心がさらに凍る思いで、やはりここに何か心がホッと見つめる事のできるアートがあれば…と思った事、末期癌患者の為に書かれた本を読みあさった中に、海外のホスピスや病院にある患者の為のアートギャラリーや絵を描いたりできるアトリエ、それらによって患者の不安が軽減されたり心が落ち着く事で延命効果があったりもするとあった事…などの経験から、ホスピタルアートに出会い、病気で心身辛い思いでいる人たちに自分が関わるアートが何か力になれるのでは…と、自分が元気を貰う思いで、個人的に関わりのあった九州の久留米医大病院や神戸のシラハ病院へ、窓の向こうに海の広がる大きな絵を寄贈したり、何年か前に出会ったホスピタルアートに取り組むNPO・アーツプロジェクト(同世代の現代美術作家・森口ゆたかさん代表)立ち上げには賛同者として名前を連ね、一昨年はY3仲間のデンマークのYUKO
の作品を兵庫県看護センターに設置する手伝いをしたりしてきました。(今回の森 合音さんのホスピタルアートも、そのアーツプロジェクトの仲立ちでした)
ただ、ここ数年、ホスピタルアートや癒しのアートとして何だかちょっと違和感を感じる物も(商売気を感じたり売名行為だったり・・)増えて、難しいな…と。
それによって本当にいい事にも逆風が吹く場合もあるんですよね。
この記事で病院院長さんが「今回は子供たちが参加したことに大きな意味があった。患者でも医療者でもない第三者の立場の森さんたちと患者との新たな交流が生まれたり、医療者もできる範囲で参加できた。誰もが和めるいい空間が生まれ、効果的だった」と振り返ってられるのが印象的でした。
森口ゆたかさんも、少し前に個展会場でお会いした時、「ホスピタルアートは、それが患者を癒す以前に、その制作に関わる人に元気をくれますよね」と言うと、「まさにそうなんですよ、病院の壁画制作に拘わった、不登校だった学生が、元気になって復帰できましたから」と言われていました。