YOKO'S SCENE

画家・井上よう子のNEWS。
天国に近い場所

この作品を描いたのは、6年前…やはり春休みの誰もいない大学のキャンパス…大きなアトリエ教室で、でした。

前年暮れに、思いがけずに推薦を受け出品依頼が来て、感激しながら「前田寛治大賞展」へ100号2点を出品するべく、大学の授業のない2月後半から3月に制作を計画していました。
そんなときに突然の父親の骨折入院。
大腿骨骨折だったため、ベッドからは起き上がる事もできない状態になり、前年心臓手術もしていたから、手術で繋ぐ事は身体に負担が大きいだろうと、このまま寝たきり状態の可能性も言われ悲しくなりながら、食事の介助に朝に夕に病院へ…
風邪で熱があってもマスク姿で病院に来る娘の姿に父親も辛かったかもしれないし、お互い気を使いあい穏やかに会話しながら…、でもこの先どうなるのか、心中不安でいっぱいの毎日。
時間はなくなり…、何とか手術ができて起き上がる事ができるようになってリハビリへ2ヶ月以上…。
締め切り迫る絵にもうだめかと思いながら、せっかく誰でもが応募できる展覧会でなく、選ばれた美術評論家や美術ジャーナリストの推薦により、運送も何もかも向こう持ちで出させて貰える名誉ある展覧会に出せないのかな…と辛い思いで…ぎりぎりまだもう少し手を入れたい思いを残しフラフラ状態で何とか送った作品。

とにかく出せただけでもよかった(推薦頂いた方にも申し訳ないし、父親も申し訳なく思うだろうしと)との思いでいたら、受賞の知らせがきて、信じられない思いで泣いてしまった…
授賞式には子供らもひきつれて「スーパーはくと」で鳥取まで(受賞者の私の交通費・宿泊代まで出していただけるという、ありがたい展でした。)
そんな記念すべき作品・・・。

東京高島屋と、倉吉博物館での巡回展を経て戻った作品を、翌年ギャラリー島田での個展に出すべく手を入れかけていたその時期に、あの恐ろしい尼崎でのJR脱線事故が起こりました。

愛する家族が、たった今までいた存在が突然逝ってしまう苦しさ…はりさけるほどの心の痛み…時を経て周囲は忘れかけてもいつでもフラッシュバックする、風化することのない深い深い悲しみ…、知っている私だから、あの日出勤先の大学で聞いた次々響く救急車のサイレン、後からわかっていった沢山の方々の悲劇…たまらない思いでした。

そんな思いを込めて詩も添えて…個展に出品した…
あれから5年経ったのかと、新聞で知って、サッカー応援に行く前に黙とうした日曜日でした…。
(画像は、「現代の洋画」2005年版)
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